会社に行くのが辛すぎて「このままバックレてしまいたい…」という衝動に駆られている方もいるのではないでしょうか。
すぐに逃げ出せたら気持ちは楽になるものの、損害賠償を請求される可能性があるという噂を聞いて、踏ん切りがつかない方もいるでしょう。すでに無断欠勤をしてしまっており、このままリスクなく逃げ切れるかなという不安を抱いている方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、以下のことについて解説していきます。
- バックレた際に損害賠償を請求されるか否か
- 損害賠償以外の問題点
また「どうしてもすぐに辞めたいけど会社に連絡するのも嫌だ…」という場合に、会社に連絡せずに即日退職ができる方法もご紹介します。
衝動的に辞めて問題が起こる前に一度、記事に目を通しておくと、後悔せずに済むでしょう。
正社員が会社をバックレたら損害賠償請求されるか?
会社をバックレしようと考えている人の中には「損害賠償を請求されるのではないか」と気になっている方は多いのではないでしょうか。
まずは正社員について、会社バックレにより損害賠償を請求されるリスクを解説します。
結論:リスクはあるが確率は低い
結論としては、損害賠償を請求されるリスクはある一方で、その確率はかなり低いです。
まず正社員の場合、雇用解約を結んでいることから、無断欠勤は債務不履行となり損害賠償を請求される恐れがあります。また契約社員や派遣社員などの有期雇用者であっても「期間内は労働をする」ことで契約しているため、こちらも債務不履行にあたります。
雇われの身である以上、会社バックレによる損害賠償の請求リスクがあることは頭に入れておきましょう。
バックレによる損失は因果関係の証明が難しい
会社バックレにより損害賠償リスクがある一方で、実際に請求される可能性はかなり低いと言えます。その理由として、因果関係の証明が難しいことが挙げられます。
損害賠償が認められるためには、従業員のバックレにより生じてしまった損失を証明しなければいけません。しかしバックレしただけで損失を証明するのは非常に難しいため、結果的に損害賠償を請求されずに済むケースがほとんどです。
バックレにより損害賠償のリスクがある2つのケース
会社をバックレたいと考えていたとしても、絶対にしないほうが良いケースも存在します。
- 雇用期間に定めがある場合
- 雇用期間に定めがない正社員の場合
一つずつ見ていきましょう。
雇用期間に定めがある場合
契約社員や派遣社員など、雇用期間に定めのある雇用形態の場合は、契約違反により損害賠償を請求されるリスクが高まります。
たとえ雇用期間に定めがあっても、会社の了承があれば辞められます。しかしトラブルがあるような辞め方をしてしまうと、訴訟リスクはかなり高まってしまうでしょう。
雇用期間に定めがある場合でも問題なく辞められるケースとしては、うつ病などの診断を受けた場合に限られます。精神的にギリギリになったために辞めたい場合は、医師の診断を仰ぎましょう。
雇用期間に定めがなくても正社員の場合
雇用期間に定めがなく、退職届を提出してすぐに会社に行かなくなった場合でも、債務不履行により会社側から訴えられたケースが存在します。
辞職の効果が生ずるまでの期間、労働者が労務提供を怠ったことが雇用契約上の債務不履行であるとして、損害賠償義務を負うことを判示した裁判例(ケイズインターナショナル事件東京地裁平4. 9.30判決 労働判例616号10頁)です。
バイトやパートなどであれば訴訟されるリスクはほぼないですが、正社員の場合はかなり不利になるので、退職の際はしっかりとした手順を踏みましょう。
【契約種類別】会社をバックレることによる損害賠償のリスク
正社員についてはわかったけれど、自分のケースはどうなのだろう?とまだ疑問を残している方もいるでしょう。ここでは、契約種類別に損害賠償のリスクをもう少し詳しく解説します。
- 試用期間のバックレでは損害賠償リスクは変わらない
- 業務委託契約のバックレは損害賠償リスクあり
- アルバイト・パートの損害賠償リスクも低め
試用期間のバックレでは損害賠償リスクは変わらない
採用されてすぐ、試用期間中にバックレた場合でも、普通の正社員と損害賠償リスクは変わりません。もちろん、通知をせずにやめたことは雇用契約違反にはなりますが、無断欠勤による損失を証明できる可能性が低いからです。
採用にかかった費用は、バックレによる損害とは認められないと考えて良いでしょう。
また、すぐに退職した場合でも、その日までの給料は全額請求できます。
試用期間中に会社をやめたくなってしまった方は、「【早めの判断が重要】試用期間中でも辞められる!退職方法や気まずい場合の対処方法を解説」の記事も役立ちます。
業務委託契約のバックレは損害賠償リスクあり
業務委託契約を結んでいる間は、損害賠償を請求することができます。特に業務委託契約書で取り交わしている部分に違反した場合は、請求されるリスクが上がるので注意が必要です。
契約書上に「中途解約条項」という、契約期間内に辞める場合のルールが盛り込まれていることがあるので、必ず確認してみてください。
ただし、中途解約条項があったとしても、その仕事を辞める場合は一定期間前に通知を求められていることがほとんどなので、バックレは避けたほうが良いでしょう。
アルバイト・パートの損害賠償リスクも低め
アルバイト・パートとして勤務している場合、損害賠償リスクは低め。その人がやめたことでどの程度会社に損害を与えたのかを証明するのが難しいためです。
ただし、無断欠勤に対する罰則が就労規則に含まれていた場合は、そこまで働いた分の給料が言及されるといったリスクがあります。やめた日までの給料は満額欲しいならば、しっかりと通知して退職したほうが良いでしょう。
会社をバックレて損害賠償請求されるリスクが上がる5つのケース
基本的に会社をバックレることで損害賠償請求につながるリスクは高くありません。しかし、以下のケースでは、企業側が実際に受けた損失を証明しやすく、リスクが上がるので注意しましょう。
- 引き継ぎをしない
- 他の従業員を引き抜く
- 研修・留学後に短期で辞める
- 特定の業務を委託された労働者がすぐやめる
- トラブルを起こしてそのままバックレる
1. 引き継ぎをしない
引き継ぎをしないでやめてしまい、その業務が完全に止まって損害が出た場合は、損害賠償請求のリスクが上がります。
本来、引き継ぎをせずにやめても、損失を具体的に伝えるのは難しく、損害賠償請求をされる可能性は多くありません。ただし、自分だけが担当しており周りの人が知らない業務があり、それが止まると企業の利益も直ちに下がる場合は注意が必要です。
2. 他の従業員を引き抜く
退職したときに、ほかの従業員を引き抜くのはNG。実際に、「ラクソン事件」では損害賠償請求が認められています。
【事件概要】
- 取締役の立場にあった社員が企業の経営方針に不満があったことを機に退職を決意
- 転職先に自身の部下を引き抜く計画を画策し、対象となる社員に“慰安旅行”と称してともに退職することを説得
- 従業員を引き抜かれたことで企業は大きな損失を被ることに
- 裁判の結果、請求額1億円に対して870万円の支払いが認められた
損失を理解しながら計画的、背信的に引き抜きをしたことが問題になり、請求額よりも小学にはなったものの、支払いが認められました。
3. 研修・留学後に短期で辞める
高額の研修や留学後にすぐやめてしまった場合、その費用の返還を求められることがあります。「野村證券留学費用返還請求事件」では、社内の留学制度の利用から1年10ヶ月後に退職した従業員にたいして、留学時に掛かった費用の返還が認められました。
【事件概要】
- 企業が設けた留学制度を利用して社員が海外の大学院へ留学
- 留学直前、社員は企業に「帰国から5年以内に退職した場合は費用を返還する」誓約書を提出していた
- 帰国してから1年10ヶ月後に退職、企業は留学にかかった費用の返還を提訴
- 退職にあたってやむを得ない事情が無いわけではないことから、企業の請求が認められる
こちらの事件の論点は企業の留学費用が“金銭消費貸借契約”にあたるかどうかでした。
裁判では金銭消費貸借契約にあたると判断されたために、従業員の費用返還が認められた事例です。
4. 特定の業務を委託された労働者がすぐやめる
特定の業務を委託する目的で採用した労働者がすぐに辞めてしまった場合も、リスクがあります。この事例が、先程も少し紹介した「ケイズインターナショナル事件」です。
【事件概要】
- 案件を履行するために雇った社員が入社してから1週間足らず退職してしまう
- その社員が担当することを条件に契約していた案件が破棄となり、見込んでいた利益1,000万円を失ってしまう
- 退職した従業員は企業に損害賠償として200万円を支払うことを合意した
- 従業員からの支払いが一向に無かったため企業側が提訴、損害賠償70万円と遅延損害金の支払いを命じられた
こちらの事件では、退職と損失の関係性が明確であったため、損害賠償請求が認められました。このように、そもそもその業務を担当する目的で採用されており、いなくなることによる損失が計算できる場合は、損害賠償請求のリスクがあります。
5. トラブルを起こしてそのままバックレる
会社に不利益をもたらすトラブルを起こし、そのままやめてしまった場合も損害賠償請求をされることがあります。この事例が「N興業事件」です。
【事件概要】
- 従業員が顧客に請求書を提出せず、813万円が回収不能となった
- 上司から過重な業務命令があり、休日出勤も多かったこともあり自己都合退職した
- 会社側は、損害金813万円を個人に請求した
- 過重労働と再発防止措置が不十分な点を勘案しつつ、当該社員には200万円の損害賠償の支払いを命じられた
このように、会社でトラブルを起こし、損失との因果が認められると損害賠償請求されることがあります。この場合は故意ではないため減額になったものの、悪質な場合は100%請求が認められることもありえます。
【損害賠償だけじゃない】会社をバックレたら起きうる7つのこと
「もう会社に行きたくない…伝えるのもめっちゃ億劫…」
と考えると今すぐにでも逃げ出したい気持ちに駆られるのではないでしょうか。いくら損害賠償のリスクが少ないとはいえ、バックレにより辞めた後はどうなってしまうのか、気になるところでしょう。
バックレにより起こりうることは、以下の7つです。
- 懲戒解雇になるのか
- 働いてた分の給料は支払われるのか
- 次の転職で不利にならないか
- 親に連絡が行かないか
- 離職票は貰えるか
- 捜索願を出される可能性もある
- バイトやパートならバックれても問題ない?
一つずつ解説します。
1.懲戒解雇になるのか
会社をバックレた場合は懲戒解雇となる恐れがあります。懲戒解雇は労働者に下される解雇の処分として、最も厳しいものです。
懲戒解雇になると、
- 再就職、転職が困難になる
- 退職金が支払われない
- 失業保険が制限される
- 解雇予告手当が貰えない
- 退職理由を正直に書けない
といったデメリットがあります。
再就職する際には退職理由を偽ると、バレた時にまた懲戒解雇される恐れがあるので、かなりリスクが大きくなります。
2.働いてた分の給料は支払われるのか
バックれた際に「働いてた分の給料はちゃんと支払われるのか」と心配になる人もいるでしょう。バックレたとしても、事業者側には働いていた分の給料を支払う義務が発生します。
しかし支払わなかったとしても事業者側に手痛い罰則があるわけではありません。そのため、バックレした従業員に対しては、働いていた分の給料が支払われないリスクは十分にあります。
支払われなかった場合に求める権利はありますが、バックレた負い目から強く出られなでしょう。仮に支払いを求めたとしても、逆に債務不履行により損害賠償を請求されるリスクもあるため、泣き寝入りすることになってしまいます。
働いていた分の給料をきっちり受け取りたいのであれば、バックレではない方法で会社を辞めるようにしましょう。
3.次の転職で不利にならないか
バックレにより辞めた事は、個人情報保護が叫ばれている現代では、他の会社に伝わる事はまず無いと考えても良いです。ただし、同じ業界などに転職する際は人づてに解雇理由が伝わる事もあるため、支障をきたす恐れはわずかながらにあります。
他の地域や業界へ転職するのであれば、バレるリスクは限りなく低いでしょう。しかし転職活動の中で正直に退職理由を書けない時点で、ハンデを背負うことになってしまいます。
会社バックレは転職で不利にならないケースはある一方で、少なくともメリットになることは一切ありません。
4.親に連絡が行かないか
バックれて本人に連絡が付かなくなった場合、会社側は事故などの可能性も見て、親へ連絡をすることも十分にあり得ます。
その際に親から退職する意思を伝えてもらうのも一つの手ではありますが、親に伝わることを避けたい場合は、しっかりと辞める意思を伝えた方が賢明です。
5.離職票は貰えるか
離職票を受け取るためには申請が必要なケースが多いので、バックれた場合はもらえない可能性が高いです。
離職票が無いと失業手当などももらえないだけでなく、次の会社で必要となることもあるので、転職時に支障をきたすリスクがあります。
そのため退職後のことを見据えるのであれば、バックレしない方法で退職するようにしましょう。
6.捜索願を出される可能性も?
無断で会社に行かずに連絡も無視してしまうと、出勤する途中で何かあったか心配になり、捜索願を出されるケースもあります。下手なトラブルにならないためにも、辞める意思は最低限伝えた方が賢明といえます。
7.バイトやパートなら放っておかれる?
バイトやパートなどの場合は正式に雇用契約を結んでいないため、そのまま放っておかれる可能性は十分にあります。バックレの事例が多い企業であれば「またバックレか」程度の認識のため、何事もなく過ごせるでしょう。
バイトやパートは気軽に入れる反面、辞める事も簡単です。しかし会社によっては、バックレた人を心配して親御さんや警察に連絡して捜索願を出されるケースもあるので、一言でも辞める意思は伝えるようにしましょう。
バックレせずにすぐに辞めたい場合の5つの退職方法【トラブルの心配なし】
どうしても即日退職したい場合、バックレではない正式な手段はいくつかあります。
ここでは以下5つの方法を紹介します。
- 有給消化の申請をする
- 傷病欠勤扱いにしてもらう
- 電話やメールで伝える
- パラパラやセクハラで訴えたい場合は弁護士を利用する
- 退職代行で即日退職も可
一つずつ解説します。
1.有休消化の申請をする
法律上、退職する2週間前に意思を伝えなければいけないので、最低でもその期間だけでも出勤する必要があります。もしもここで2週間無断欠勤をしてしまうと、懲戒解雇のリスクがあるため、次の就職に響いてしまうでしょう。
そこで無断欠勤とならないために、有給の申請をして2週間後に辞める手があります。退職日が決まっている場合の有休消化の申請は、会社側が時季変更権を行使できないため、希望日に消化できます。そのため退職届と同時に有給申請もしてしまいましょう。
2.傷病欠勤扱いにしてもらう
うつ病などになってしまったことで、診断書をもらった場合は、傷病欠勤扱いにしてもらえる可能性があります。
退職日を指定した日まで傷病欠勤で休むことで、出勤することなく退職が可能です。
3.電話やメールで伝える
電話やメールで退職を伝えることも、一つの方法です。退職する旨が会社側にも伝わっているので、バックレよりはトラブルなく辞められます。
ただし退職の際は「退職日の2週間以上前に伝える」ことが法律で決められているので、電話やメールで伝えてしまうのはマナー違反に当たります。
そのためどうしても会社に行けない等の事情がない限りは、使わない方がいい手段といえます。
4.パラパラやセクハラで訴えたい場合は弁護士を利用する
もしも上司からパワハラやセクハラを受けた事が苦痛で辞めたい場合は、弁護士に相談すれば損害賠償を請求して辞められます。弁護士であれば退職代行手続きも行ってくれるところもあるので、退職と訴訟を同時に進められます。
その場合は退職代行を主に行なっている弁護士事務所に頼むと良いでしょう。弁護士事務所に退職代行を依頼するメリットについては「【完全版】退職代行を弁護士に依頼するメリット・デメリット!利用を決める判断基準も解説」の記事で詳しく解説しています。気になる方はぜひご覧ください。
5.退職代行で即日退職も可
どうしても即日退職したい場合は「退職代行サービス」を利用すると便利です。
退職代行サービスでは会社に退職の意思を伝えたその日から出勤する必要がないので、
「入社して日が浅いけど辞めたい…」
「長年勤めているので辞めづらい…」
「辞めたいと伝えても引き止められる…」
といったように辞めたいと言いづらかったり、引き止められたりする場合でも、スムーズに辞められます。
バックれたいのは「会社に辞めると伝えるのも億劫…」という理由があるかもしれませんが、そこを代わりに伝えてくれるのはかなり気持ち的に楽になります。
「会社に辞める事を伝えなきゃいけない、でも伝えづらい…」という場合は、退職代行サービスの利用をおすすめします。
またバックレたり無理矢理辞めようとすると、有休消化を頼むのは難しいと思ってしまうため、諦めてしまいがちです。
しかし退職代行を利用すれば有給消化が可能な上に、ある程度の期間が残っていれば退職代行の費用を賄えてしまうので、何の損もなく即日退職ができます。
【損害賠償の心配なし?】バックレる際のよくある質問
メールで退職を伝えれば問題ない?
メールで退職を伝えるのはマナー上はアウトですが、アルバイトやパートなどであればそれでトラブルなく辞められるでしょう。しかし、正社員などの場合は懲戒解雇扱いになる恐れもあるので、できれば避けるべき方法と言えます。
退職後のことを考えると、会社を辞める際は退職届を提出する工程は必要です。
退職届を郵送で提出すればバックレても問題ない?
退職届を郵送してバックレれば、退職として認められる可能性は十分にありますが、おすすめはできない方法です。
退職届を郵送すれば会社側への意思表示はできているので、捜索願を出されたり親へ連絡がいったり、といった心配はありません。しかし退職時の本来のマナーは「上司に伝えた上で退職届を出す」ことなので、トラブルにつながるリスクは十分にあります。
退職代行の郵送提出については「退職届を郵送してバックレても大丈夫?スムーズに進める方法と注意点を解説」の記事で解説しています。気になる方はこちらをご覧ください。
正社員のバックレはおすすめできない
結論として、正社員や有期雇用契約の従業員がバックレするのは、どんな場合でもおすすめできません。バイトやパートなどであれば問題ないケースも多いですが、辞める意思は伝えたほうがトラブルなく退職できます。
もしもどうしても即日辞めたくて、なおかつ会社に辞めると伝えづらいのであれば、退職代行を利用しましょう。
「退職代行SARABA」であれば労働組合が運営しているので、有休消化や退職日の調整、離職票の申請なども会社と交渉可能です。