「退職の意思を伝えたらボーナスを返せと会社にいわれた」
「指示されたらボーナスは返還しないといけないの?」
「ボーナスを満額受け取って退職したい 」
と悩んでいるのではないでしょうか?
夏と冬に2回されるのが一般的なボーナス。ボーナスを満額受け取って退職できれば、退職後の生活費にも当面困らないでしょう。
しかし、退職後に「ボーナスを返せ」といってくる会社も一部存在します。では、そのようなときはボーナスを返さなければならないのでしょうか?
この記事では、
- ボーナスがもらえる条件
- ボーナスの返還を求められた事例
- ボーナスをもらって円満に辞めるポイント
についてくわしく解説します。
会社にボーナスを返せといわれたときの対処法を知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
退職時にもらったボーナスは原則返さなくてOK
結論からいうと、退職時にもらったボーナスは原則返す必要はありません。
たとえ会社から「今辞めたらボーナスを返還しないといけないぞ」といわれても、応じる必要はないでしょう。
とはいえ、場合によってはボーナスを減額されるケースも存在します。ボーナスは以下3つの基準から算出されるためです。
- 個人の過去の業績
- 会社の業績
- 個人への期待
3つ目の未来への期待を込めてボーナスを支給した場合は、減額されても文句はいえません。
1996年にあったベネッセコーポレーション事件においては、下記のように論じられています。
将来に対する期待の程度の差に応じて、退職予定者と非退職予定者の賞与額に差を設けること自体は、不合理ではなく、これが禁止されていると解するべき理由はない
上記のように、個人に対する期待に対して支払われた場合は減額される可能性はありますが、基本的にボーナスを返還する必要はありません。
退職時に「ボーナスを返せ」といわれないための条件を解説
ボーナスとは、通常の賃金以外に特別支払われる賃金で、労働基準法における賞与に該当します。
第十一条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
引用元:e-Gov
退職をする際、「どうせならボーナスを満額もらって退職したい」と考える人も多いのではないでしょうか?実際にボーナスをもらった後に退職をするといった話はよく聞きます。
ボーナスをもらってからの退職を検討している人は、まずボーナスがもらえる条件を把握しておきましょう。
- ボーナス支給額決定の締め日以降に退職する
- そのほかの条件は就業規則に準ずる
- ボーナス支給日に退職していない旨を求める傾向がある
- 退職後にボーナスの支払いを求めても認められにくい
ではそれぞれ解説します。
1. ボーナス支給額決定の締め日以降に退職する
ボーナスをもらうためには、ボーナス支給額決定の締め日の時点で会社に在籍している必要があります。したがって、少なくともボーナス支給額決定の締め日以降に退職をしなければ、ボーナスは受け取れません。
12月25日がボーナスの支給日、12月15日がボーナス支給額決定の締め日であれば、12月16日以降の退職であれば、ボーナスを受け取れます。
2. そのほかの条件は就業規則に準ずる
一般的にボーナスについての条件は就業規則に定められています。そのため、基本的なルールは就業規則で確認してください。
就業規則では以下のようなルールが定められています。
- ボーナスを受け取れる対象者
- ボーナス額の基準
- 査定期間
- 支給回数
一般的にはボーナスを受け取れるのは正社員のみです。ボーナス額の基準については非公開にしている企業が多いですが、業績や能力、勤続年数などによって決められます。また、ボーナスには査定期間(概ね6ヵ月)と呼ばれるものがあります。
したがって、ボーナスを満額もらうためには査定期間中、会社に在籍している必要があるでしょう。
では、査定期間が「4月~9月」「10月~3月」の企業において、あなたが12月に途中入社した場合はどうなるのでしょうか?
このような場合は、12月~3月の4ヵ月のみが査定期間に該当します。したがって4ヵ月分の評価に応じてボーナス額が決定します。
3. ボーナス支給日に退職していない旨を求める傾向がある
ボーナス支給額決定の締め日の時点で会社に在籍していれば、ボーナスがもらえまるでしょう。
とはいえ、ボーナス支給日までに退職した場合は、ボーナスを受け取れない可能性が高くなります。実際に裁判では労働者側が敗訴しています。
さきに示した事実関係からすれば、死亡退職の場合を除き、計算期間に在籍しても賞与支給日に在籍しない嘱託には賞与を支給しない旨の確立された労使慣行が存在したということができる。
引用元:全基連
なぜなら、明文の規定がなくても社内の労働慣行として成立しているからです。
自己都合退職や期間満了により契約を終了した嘱託社員についても、労働者が自由に退職日を決められるため、会社側が勝訴しています。
4. 退職後にボーナスの支払いを求めても認められにくい
退職後にボーナスの支払いを求めても認められにくいため注意が必要です。
そのため、確実に受け取るなら、ボーナス支給日以降に退職するのをおすすめします。
ただし、例年のボーナス支給日には在籍していたが会社側の事情により支給日がずれた場合については、労働者には責任がありません。
このようなケースでは、ボーナス支給日前に退職をしていたとしても、ボーナスを受け取れる可能性が高いでしょう。
退職時に「ボーナスを返せ」といわれる事例と対処法5選
まれに退職をした後に、会社からボーナスの返還を求められるケースもあります。一度受け取ったボーナスを再び返すのは納得がいかない人も多いのではないでしょうか?
多くの会社では就業規則にボーナスの条件を明記しています。就業規則を盾にボーナスの返還を求められた際に応じなければならないのか説明します。
- 賞与を受け取ってすぐに退職した
- ボーナスを全額返せといわれた
- ボーナスの自主返還を求められた
- 退職までに有給を使った
- 年俸制のため返還するよう求められた
順番に見ていきましょう。
1. 賞与を受け取ってすぐに退職した
一部の会社では、就業規則に「賞与をもらってから●ヵ月以内に退職したら全額返還をすること」と明記されているケースもあります。
このようなケースでは、たとえ就業規則に明記されていても、ボーナスを返還する必要がありません。
この就業規則の内容は違約金について定めているため、労働基準法第16条違反に該当するからです。
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
引用元:e-Gov
仮にこのような就業規則を認めてしまうと、労働者の自由な退職を妨げることになります。そのため、賞与の支給日に在籍していた以上、返還に応じる必要はありません。
2. ボーナスを全額返せといわれた
年度途中に退職後、会社から「年度途中で退職をしたらボーナス全額を自主的に返還してください」といわれるケースがまれにあります。
このようなケースでは、就業規則に規定があっても、ボーナスを全額返還する必要がありません。
ボーナスには将来的に頑張ってもらう目的もありますが、全額の返還を認めてしまうと、公序良俗に違反するからです。
公序良俗とは、「常識的に考えて妥当でない行為」を表します。
とはいえ、ボーナスの一部返還(2割前後)については認められるケースもあります。
ベネッセコーポレーション事件では、退職予定がなければ162万2,800円、年内退職であれば在籍月数分しか支払われないという原告側の主張が認められませんでした。
しかしながら、本来の趣旨が賃金と認められる原告の賞与において、過去の賃金とは関係のない純粋の将来に対する期待部分が、被告と同一時期に中途入社し同一の基礎額を受給していて年内に退職する予定のない者がいた場合に、その者に対する支給額のうちの八二パーセント余の部分を占めるものとするのは、いかに在社期間が短い立場の者についてのこととはいえ、肯認できない。
引用:全基連
結果的に年内に退職をしていない人のボーナス額の8割を支払う結果になりました。
3. ボーナスの自主返還を求められた
退職の意思を伝えた際に「退職したらボーナスを自主返還する旨の書類にサインしてください」といわれるケースもあります。
このような約束は公序良俗に違反するので、サインをした後でも返還を求めることが可能です。
とはいえ、かんたんにサインをしないのが一番です。後から返還を求めたい場合、時間とお金をかけて裁判をしなければなりません。
4. 退職までに有給を使った
退職日までに有給を使った場合は、ボーナスを減額される可能性があります。
先述しましたが、ボーナスは以下3つの指標から支給されます。
- 個人の業績
- 会社の業績
- 将来への期待
有給を使った場合は将来への期待分を働いていないことになるので、ボーナスを減額される可能性は大いにあるでしょう。
とはいえ、全額返還を求められた場合は応じる必要がないので、注意してくださいね。
5. 年俸制のため返還するよう求められた
年俸制の場合は、月々の給料にボーナスが含まれているのが一般的です。そのため、支給する予定のボーナスを返還するように求められるケースもあるでしょう。
とはいえ、年俸制のボーナスは返還する義務はありません。ボーナスという名目ではありますが、給料に含まれているものは受け取れるためです。
ボーナスをもらって退職する際の4つのポイント
スムーズにボーナスをもらって退職したい人は、これから解説する4つのポイントに注意しましょう。
- ボーナスを受け取ってから退職を申し出る
- 引き継ぎ期間は十分取る
- 転職先への入社は内定から1,2ヵ月が一般的
- 入社してすぐであればボーナスをもらわずに退職してもよい
円満に退職するためにも必ずこれらのポイントを守ってくださいね。
1. ボーナスを受け取ってから退職を申し出る
もっともトラブルになりにくい方法は、ボーナスを受け取ってから退職を申し出ることです。
ボーナス支給日以前に退職の意思を伝えた場合、賞与の支給額に影響が出るおそれも否定できません。
なぜなら、ボーナスの支給額は本人の能力だけでなく会社の業績も踏まえて決まるからです。証拠がない以上、不服申し立てをするのも難しいでしょう。
ボーナスを受け取った後に退職の意思を伝えれば、返還を求められたり減額されたりするリスクは低くなります。
一般的にボーナスは8月と1月に支給されるので、その月を目安に退職を切り出すように準備をしておきましょう。
2. 引き継ぎ期間は十分取る
ボーナスを満額もらえても、会社に悪い印象を与えて退職するのはよくありません。最悪のケースでは、転職先の会社にバレるリスクもあります。
特に引き継ぎは期間を十分に確保し、必ず行ってください。引き継ぎが満足にできなければ、業務に支障が出たり取引先へも迷惑がかかったりするからです。
3. 転職先への入社は内定から1,2ヵ月が一般的
退職する際は、転職先への入社日から逆算して退職日を決めましょう。夏と冬のスケジュールは以下の通りです。
スケジュール | 夏の場合 | 冬の場合 |
転職活動時期 | 4月 | 10月 |
内定 | 5月 | 11月 |
ボーナス支給日&退職届提出日 | 6月 | 12月 |
退職日 | 7月 | 1月 |
入社日 | 7月 | 1月 |
転職活動は退職する前からはじめておきます。また転職先への入社は内定から1,2ヵ月が一般的です。それ以上の期間となると待ってもらえないケースもあるので注意してください。
4. 入社してすぐであればボーナスをもらわずに退職してもよい
入社直後「業務が向いていない」「ブラック企業だから辞めたい」という理由で、退職をしたい人もいるでしょう。
入社直後数ヵ月以内であれば、ボーナスをもらう前に退職をした方がよいといえます。なぜなら、入社直後の場合、ボーナスの査定期間が短いからです。
たとえば、ボーナスの査定期間が4月~10月、11月~3月の企業のケースで考えてみましょう。4月入社の新入社員の場合、査定期間の11月~3月に在籍していないので、ボーナスの対象外だったりもらえても少額だったりします。
そのため、あまりボーナスがもらえないのであれば、早く辞めて違う会社に転職した方がよい可能性があります。
入社してから間もない場合は、ボーナスの金額だけにとらわれないようにしましょう。
なおボーナスをもらわずに退職するメリットについて詳しく知りたい人は「退職をボーナスまで待てないなら我慢しなくていい!すぐやめる5つのメリット」を参考にしてみてください。
ボーナスをもらった後に退職するメリット・デメリット
先ほどボーナスをもらった後に退職を申し出るべきだといいました。とはいえ、ボーナスをもらってからの退職には悪い面も存在します。
こちらではボーナスをもらった後に退職するメリット・デメリットについて解説しますので、ぜひ目を通してみてくださいね。
メリット
ボーナスをもらった後に退職するメリットは、懐が暖まった状態で転職活動が行えることです。
転職時には移動代や写真代など、色々なお金がかかります。ボーナスをもらわずに退職すれば、思ったよりお金がかかると苦労する可能性もあるでしょう。
また転職に失敗してしまったときの生活費の工面にもなりますし、経済的に余裕ができるので安心できます。
デメリット
逆にボーナスをもらった後に退職するデメリットは、転職先のボーナスが下がったり転職の難易度が上がったりすることです。
会社のボーナスをもらうまで待つと転職が遅くなり、その分転職先で働く期間が短くなります。結果として、もらえるボーナスが少なくなるでしょう。
加えて時期によっては求人が減り、倍率が高くなる可能性もあります。
上記のようなデメリットもあるため、ボーナスを待たずに退職してしまうのも1つの手といえるでしょう。
「ボーナス返せ」といわれたくないなら退職代行の利用がおすすめ
ボーナス支給後に辞めたくても、上司が退職を認めてくれず悩んでいる人もいるのではないでしょうか?しかし、退職をするのは労働者の自由です。
民法では、辞める2週間前までに意思を伝えれば退職ができると定められています。
なかなか辞められないのであれば、退職代行を利用してみてはどうでしょうか?退職代行を利用すれば、自分の代わりに担当者が退職の意思を伝えてくれるので「ボーナスを返せ」といわれることはありません。
また未払い残業代の請求や有給の取得も可能ですし、なかには転職サポートがついている業者も存在します。
どの退職代行を利用すればよいのかわからない人は「【2022年版】退職代行おすすめランキング15選!退職代行を選ぶときに見るべき7つのポイントも徹底解説」を参考にしてください!